「エシカル」とは、直訳すると「倫理的な」という意味をもつことば。近年は「人や地域、地球環境に配慮した製品や行動、考え方」を表すキーワードとして広く使われています。使う人や、関わり方によってさまざまな意味をもつのがエシカルのおもしろさ。エコやロハスに「自分らしさ」や「生き方」といった視点をとりいれた、ライフスタイルそのものを表現する概念として捉える人も多くいます。ヘアを通じて美を追求してきたルベルでも、「環境」は美しさの大切な要素のひとつととらえ、エシカルでサスティナブルな活動に取り組んでいます。(ルベルの環境活動を、詳しく知りたい方はこちら)
ここでは、ルベルの取り組みに共感してくださった著名人にインタビュー。エシカルライフとの出会いや、大切にしている習慣などをお伺いし、豊かなライフスタイルのあり方に迫ります。
今回お話を聞いたのは、サステナブルなアパレルブランドを主宰する羽倉綾乃さん。長年ヨーロッパで暮らす羽倉さんならではの「エシカル」や「サステナブル」に対する想いを、前編・後編でお届けします。
profile
大学卒業後ドイツに渡り、現地で宝石商の資格を取得。高級宝石店勤務で営業力を磨いたのち博報堂ドイツに転職し、ハイエンド化粧品メーカーのブランディングに携わる。結婚後、長男が1歳の時に日本へ帰国し、東京のアパレルブランドで社内通訳として勤務。その後次男を授かり、イタリア・ミラノへ移住。子育てをするなかで抱いた「自然とのふれあいを大切にしながら、子どもたちを育てたい」という想いを実現するために、持続可能なファッションアイテムを展開するアパレルブランド「AYANOHAKURA」を立ち上げた。2018年のブランドスタートから、濡れない、汚れにくいといった特徴を持つ機能性素材を用い、ドレスやシャツを多数発表。代表作でもある「濡れないラップドレス」が一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会主催の第7回ソーシャルプロダクツアワード2021において、ソーシャルプロダクツ賞を受賞するなど、近年大きな注目を集めている
Q1 あなたとエシカルの出会いは?
A 同世代の少女のスピーチに、はっとさせられたのがきっかけ。
環境問題を意識するようになったのは中学生のころ。当時12歳だったセヴァン・スズキさんによる、国連でのスピーチをテレビで見たんです。「地球はどんどん死んでいる」と、同世代の少女が語っていることに、衝撃を受けました。それまでにもなんとなく「エコ」や「ロハス」という言葉は知っていたけれど、 “世界を5分黙らせた”とも言われる彼女の力強い言葉にぐっと引きつけられたのを覚えています。
―感動だけで終わらせず、実際に行動を起こされるようになった理由は?
帰国子女や外国籍の生徒が多い高校に通っていたことと、大学卒業後すぐ、海外で暮らし始めたことの影響は大きかったですね。友人たちが、地球のため、未来のためにデモに参加したり、情報を発信したりする姿を間近で見ていました。そういった環境に身を置くことで、だんだんと苦しんでいる途上国の人々や、動物たちの存在を知るようになったんです。こういった人々や動物の声って、とても小さくて、なかなか社会に届かないもの。だからこそ、私は彼らの小さな声をしっかり聞いて行動していこう、と思うようになりました。そういった気持ちが、エシカルな暮らしを実践する原動力になっていると思います。
Q2 アパレルブランドを立ち上げた理由は?
A 作る人、着る人に安全な服で、全世界の女性を応援したい。
環境に配慮した洋服で、女性の人生を豊かにしたい、と思ったのがAYANOHAKURA立ち上げのきっかけ。子どものいる女性って、妊娠で体型が変わりますし、育児中は子どもが汚すので、おしゃれを諦めてしまうことが多いですよね。じゃあどんな体型でもスタイルよく着こなせて、汚れがつかない服であれば、女性を輝かせることができるんじゃないか、と考えたんです。服は、私のエシカルな思考を表現する方法であり、全ての女性に向けた私からの応援歌なんです。
―服を作るときに「これだけは譲れない!」というポイントは?
着る人に安全なことはもちろん、作り手の健康とフェアな収入を保証することが絶対条件。また、流行り廃りなく、長く着られることも大切ですね。使い捨てでなく長く大切に着られる服、ということもAYANOHAKURAがめざすエシカルのかたちのひとつなので。お客さんから「私が着たあとは妹にゆずって、その後は妹の娘に着てもらいたい」という言葉をいただいたときは、想いが伝わったー!とすごく嬉しかったです。あとはとにかく、情熱ですね。そもそも私は服やデザインの勉強をしたことはなくて、情熱だけでブランドを立ち上げたんです。だから、ミラノでAYANOHAKURAをスタートしたときは「知識も経験もないけど、絶対これをやりたいんだ」っていう想いをパタンナーや縫製屋さんに伝えることから始めました。情熱がしっかり伝われば、みんな協力してくれます!これからも情熱を持って服を作り、その服を通じて、全ての女性を応援していきたいです。
Q3 日々欠かさない、エシカルな習慣を教えて!
A 小さなエシカルの積み重ねが、納得のいく日々をつくっていく。
息子2人と一緒に、週に1度はゴミ拾いをしています。街をきれいにしたいという想いもありますが、ゴミが落ちていることを子どもたちに知ってもらうのも、目的のひとつです。ゴミが落ちているのは、捨てる人がいるから。小さなゴミでも、それが原因で動物が死んでしまうこともある。ゴミがあるという事実と、それが引き起こす結果を知って、なにか感じたり、考えたりして欲しいと思っています。彼らも、ゲーム感覚で楽しんでくれていますね。また、出かけるとき、常にタッパーを持ち歩くのも私のポリシー。パンでもスイーツでも、テイクアウトする際はそれに入れてもらいます。もちろん、お店から断られることもありますよ(笑)。でも、やれることはやって、納得できる日々を過ごしたいんです。
―日々口にする食事に関しても気を遣われていますか?
できるかぎり加工されていない「ホールフード」の野菜や果物を買うようにしています。加工されるほど、環境にも体にもよくないものが入っていることが多いので。私はヴィーガンですが、それを息子たちに強制はしていないですね。自分で考え、選んだ道を進んでいって欲しいと思っています。
Q4 海外から見て「日本のエシカル」をどう思う?
A 一人ひとりが動けば、日本らしいエシカルが叶うはず。
節電しよう、ゴミを減らそう、っていう声が上がったとき、ヨーロッパだと大元からやめてしまうことが多いです。電気を使うもの自体を減らしたり、ペットボトルを禁止したり。でも日本は省エネ家電や環境に優しいペットボトルを開発して、技術でその問題に向き合おうとしますよね。それが日本の強みであり、弱みでもあるかなと。消費者の声が良くも悪くも強すぎて、社会が大きな方向転換をしづらいんだと思います。でも技術力と真面目さがあるからこそ、消費者の考えが変わることで、一気にエシカルな方向に向かっていける力を持っていると思いますね。
―消費者である私たちが、変化を受け入れて、少しずつ行動していくことが大切ですね。
ちょっとした包装を断るとか、タッパーやマイボトルを持ち歩いてみるとかね。そういった習慣を始めている人も多いと思うので、そのチャレンジをぜひ周囲の人に話してみてください。有名人や、権力のある人がエシカルを語るより、友達や恋人から聞いた方が影響力があると思いませんか?最初は気恥ずかしさがあるかもしれません。でも、発信する人が増えることが、社会全体の変化につながっていくと思うんです。
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