カラーと並んで、ヘアサロンの代表的なメニューであるパーマ。カットやスタイリングとは異なるヘアデザインの幅を広げてくれる技術です。今回は、パーマ用製品の種類・特徴やパーマがかかるしくみ、パーマを長持ちさせるコツについて解説します。
パーマの目的
パーマの目的は、毛髪の形状を変えて維持させることです。
ヘアアイロンやコテ、スタイリング剤を用いた形状変化とは異なり、「パーマネント(=永久の)」というように、パーマは一度かけると毛髪の形状変化が半永久的に持続します。パーマをかけることで、ウェーブを形成するだけでなく、クセやボリュームのコントロールなどができ、様々なデザイン表現が可能になります。
また、日々のヘアセットが楽になることもパーマの魅力の一つです。
パーマ用製品の種類
パーマ用の製品は、大きく分けて「医薬部外品」と「化粧品」の2種類が存在します。
医薬部外品を「パーマ剤」、パーマと同じようなカールを作ることが可能な化粧品を「カーリング料」と呼びます。
医薬部外品は、パーマの原理となる還元作用のある成分を多く配合できるため、化粧品よりも高い効果が得られる傾向にあります。
一方で化粧品は、新しい作用のある成分や毛髪保護成分など、様々な成分が積極的に配合されたユニークな製品が多く作られています。
パーマ剤の構成
「パーマ剤」は、1剤と2剤からなります。
1剤の主成分は還元剤とアルカリ剤で、その他に安定剤やコンディショニング成分などが配合されています。
2剤の主成分は酸化剤で、安定剤やコンディショニング成分などが配合されています。
パーマがかかるしくみ
毛髪の内部はアミノ酸の集合体で形成されています。アミノ酸同士はペプチド結合による主鎖と、還元作用のある成分で切断される「シスチン結合」、プラスとマイナスによる電気的な「塩結合」、水によって簡単に切断され乾燥することで再結合する「水素結合」の側鎖により、「はしご」のような構造をしています。これらの結合により、髪はしっかりと安定した状態を保っています。
パーマは主に、側鎖の結合を組み換えることによって形状を変化させます。
ウェーブをかけるには、まず毛髪を濡れた状態にして水素結合を切断し、ロッドなどを用いて髪の形状を巻いた状態に固定します。
パーマの1剤を塗布すると、1剤に含まれる「還元剤」によってシスチン結合が切断されます。また、アルカリによって塩結合も切断されます。
その状態で2剤を塗布すると、2剤に含まれる「酸化剤」によって、切断されたシスチン結合が元の位置からずれた状態で再結合されて固定されます。また、1剤によってアルカリ性に傾いていた髪が元の状態(弱酸性)に戻ることで、塩結合も再結合します。
最後に髪を乾かすことによって、水素結合も再び形成されます。
このように、シスチン結合をはじめとする各種結合の切断と再結合によって、ウェーブ形状がキープされます。
ウェーブを長持ちさせるためには?
パーマで形成されたウェーブは永久的ではありませんが、長持ちをさせるコツがあります。その前に、まずはウェーブがゆるんでいく理由を説明します。
①日々のシャンプー・ドライの繰り返しによって、塩結合、水素結合の切断と組み換えが進行し、髪が元の状態に戻ろうとする力が働く。
②髪が日常生活で受けるダメージなどにより毛髪成分の流出が起こり、弾力が失われていく。
このように、パーマにより形成したウェーブの維持には、毛髪内の各種結合が重要となります。ウェーブを長持ちさせるためにできることを紹介します。
・ドライ時に髪を引っ張らない
コームでとかしたり、ブローなどの髪を伸ばす行為は、形成したウェーブが髪本来の形に戻ろうとするのを手助けしてしまいます。根元をしっかり乾かし、毛先はウェーブした状態のまま丸めてやさしく温風を当てましょう。
・保湿してスタイリングする
パーマ後は、なるべくウェーブが出やすくなるように、ウェット状態でスタイリング剤を使用します。日中もウェーブをキープすることで長期的なウェーブの持ちにもつながります。
美容師の技術だけでなく、日々のヘアケアをきちんと行うことで、パーマスタイルを長く楽しむことができます。
髪のおしゃれや悩みには欠かせないパーマ
パーマは、様々なヘアスタイルをデザインしたり、一人一人の髪の悩みを解決したりするために欠かせない技術です。パーマの種類やウェーブがかかるしくみを知り、ウェーブを長持ちさせるためのコツを抑えて、髪のおしゃれを楽しみましょう。
参考:『きほんの毛髪科学』(女性モード社刊)
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